働く女性の戦略的生活スタイル|Another You STYLE
働く女性の生活を戦略的に考え、仕事・ファッション・くらし・美容/健康・スキルアップ・食事などについて、ミニコラムとしてご提案・ご紹介してまいります。

このごろ疲れやすくなった、昔のように頑張れない、と感じることはありませんか。職場でベテランと言われる年代になると、体力の衰えを感じることが多いでしょう。自分がそうなら、親はもっと体力が衰えているはずで、特に冬は心筋梗塞など緊急対応が必要な病気が出やすい季節です。例えば、別居している親が救急車で運ばれてあたふたした人、親の病気で対応に苦慮した人を何人も知っています。このコラムでは、これらの実体験を聞いて、万が一の親の緊急事態に備えてこれだけは子供が事前にやっておいたほうがよい、と感じた3つのことをお伝えしたいと思います。
1.親の病歴をまとめておく
救急搬送されると、病院で今までの病歴を聞かれます。病歴データが公的機関等で一元的に管理されていないので、そうするしかないのです。救急で搬送された場合、本人が会話できる状態とは限りませんし、本人も家族も動揺して、漏れなく正しく伝えられるとは限りません。さらに、独立して時間が経っている子供は、親がいつからどのような病気にかかっているかを正確に知らないケースもあり得ます。
そのため事前に、いつから、どのような病気で、何という病院にかかっている(た)か、を親に確認して病歴リストに書き出しておくことをおすすめします。時間的に余裕があれば、家族それぞれが記憶をもちよることで、より正確な情報をまとめることができるからです。また、病院では現在服用している薬も聞かれます。それに備えて例えば、保険証と診察券・お薬手帳・病歴リストをまとめて100円ショップのファスナーつきの透明な袋に入れ、「医療情報」と大きく書いたラベルをつけて壁の目立つところに吊り下げる方法もあります。病歴リストには、治療が終了している病気(既往症)は、病名と治療した期間・治療した病院名、現在治療中の病気(現病歴)は、それに加えて大体の治療経緯を記入します。「救急医療情報キット」を配布している自治体もありますので、それに入れる用紙を参考にするのもよいと思います。
病状が安定すると、自宅に帰れる状態でなければ、救急車で運ばれた病院(急性期の病院)から違う病院(回復期リハビリテーション病院や療養病院)や介護施設(老人保健施設や特別養護老人ホームなど)に移るケースがほとんどのようです。その時も、また病歴を聞かれるでしょう。まず最初に家族が移る候補の病院や施設に行き、家族はどういったところなのかの確認、病院や施設は患者の現状ヒアリングをするという形になるからです(現在入院している病院から候補先へ患者の情報が提供されるのは、家族面談の後)。場合によっては何度も病歴を伝えることになるのです。
2.親の希望を確認しておく
入院したとき、面会者が来てくれるとうれしい人も、病気の姿を見せたくないという人もいます。話はできないが意識はそれなりにあるように思える場合、事前に希望を聞いておかないと、元気を出してもらうために友達に会わせた方がよいのか、かえって逆効果なのか判断がつきません。面会をどうするかは、それほど重篤でないケースでも起こり得る問題なので、まだ話しやすい話題だと思います。
本人が意志表示できない状態になると、本人に代わって家族が決断しなければならないことがたくさん出てきます。そのなかでもっとも大変なことは、心臓マッサージなどの心肺蘇生をするか、人工呼吸器をつけるか、あるいは栄養補給をどうするか(胃ろうや高カロリー輸液IVHなど)、ということでしょう。事前に胃ろうやIVHは望まないと言っていた人でも、回復の希望があるので胃ろうやIVHを行ったほうが良い場合もあります。しかし、回復のための栄養補給だったものが、次第に生命維持(延命)の割合が増えていくこともあります。白か黒かはっきりしないグレーになっていくのです。するかしないかの二択結果を事前に聞くだけでは判断が難しく、この状態ならきっと親はこう考えるだろうとある程度の推測ができるくらいまで話をしておけば、あれで本当によかったのだろうかと後から迷い悩むリスクを低くできます。
心肺蘇生・人工呼吸器や栄養補給については、こちらに簡単な説明があります。
国立長寿医療センターの事前指示書(PDFファイル)のP.6~7→★
心肺蘇生・人工呼吸器や胃ろうなどの栄養補給をどうしたいかという話をするのは、する方もされる方も抵抗があることも多いでしょう。しかし、終末期は誰にでも必ず訪れるのです。親はどうしたいのか本当の考えを聞きだすため、まずは面会の話をして、親子で一緒に終末期を考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
3.健康診断を受けてもらう
会社で働いていれば定期的に健康診断がありますが、リタイアするとそうもいきません。病気がちの人は、「病院に通っているから大丈夫」と勘違いしたり、元気な人は「まだまだ丈夫だから」と気にも留めなかったりと、健康診断から遠ざかっていることも多いのではないでしょうか。自治体が無料で行う健康診断は内容が乏しいケースもあり、そうなると自費で人間ドックとなりますが、面倒で費用もかかるからとついついさぼってしまう、ということもあるでしょう。
働いていて一番困るのは、予定外の突発作業、中でも緊急対応が必要な突発作業が発生することだと思います。もし親が病気だったとしても、緊急入院・治療と計画的に入院・治療では、子供の生活(特に仕事)への影響がまったく異なることは簡単に予測がつきます。健康診断によって初期の段階で病気が発見できれば、本人の負担が少ないだけでなく、子供も治療で果たすべき役割をタスクとしてスケジュール化しやすくなります。親に健康診断を受けてもらうことは、子供が自分の生活ペースを守るためにも役立つのです。何より親の病気が進行していて苦しむ姿を見るのは辛いことですから、人間ドックの費用をプレゼントするなどして親の背中を押してみるのもよいでしょう。
終末期は誰にでも必ず訪れます。であれば、親の人生も子供の人生も大切にした終末期にしたいものですが、何も準備していないと子供に悔いが残るケースが多いようです。この3つだけではもちろん足りないでしょう。より広範囲に備えるために参考になる本を、別コラム「働く女性こそ親の老後に備える」でご紹介していますので、そちらも参考になると思います。
